【家庭学習力がアップする生活習慣】 携帯・スマートフォンのリスクについて③〜成績の下降〜
スマホを長時間使う子供ほど、
なぜか学力テストの結果が悪かったとの報告書
(文部科学省、全国の小6・中3全員調査)
児童生徒の学習・生活習慣と学力との関係
(参考:平成26年度 全国学力・学習状況調査 報告書・調査結果資料:国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research)
携帯電話やスマートフォンの使用時間と学力テストの結果の関係を見ると、
例えば小学生の「算数A」では、利用時間が30分未満だとした生徒の平均正答率が79.8%だったのに対し、4時間以上だった生徒では66.6%です。
他の科目や中学校の各科目でも、利用時間が短いほど平均正答率が上がる(利用時間が長いほど平均正答率が下がる)という傾向がきれいに出ています。
テレビゲーム(ゲーム機、携帯電話、スマートフォンなどを含む)の利用時間についても同様の傾向が出ているとのことです。
長時間勉強してもスマホをやり過ぎると、
勉強の効果がなくなる傾向がある
※ゲームソフト「脳トレ」の監修をした川島隆太教授らが中学生2万4000人のデータを基にまとめた調査結果。この調査は、宮城県の仙台市教育委員会と東北大学加齢医学研究所が共同で行ったもの。
これまで、成績が悪い生徒は『スマートフォンを長時間いじっていて勉強の時間がないから』と考えられてきました。ところがまったく違う結果が見えてきたものです。
つまり、家でちゃんと勉強している生徒でも、スマートフォンを使う時間が長ければ、家で勉強しない生徒よりも学力が下がっている傾向が統計的に表れたのです。
上のグラフは数学の成績をまとめたものです。1日1時間以上スマホを利用すると、成績が下がる傾向が見て取れます。
2時間以上勉強してもスマートフォンを4時間以上使っていると、勉強は30分未満だがスマホの利用時間が1時間未満の生徒の方が平均点が高いという結果が出ました。
この傾向は数学で最も顕著に表れたが、国語、理科、社会、英語の4教科でも、同様の傾向が出ているとのことです。
(川島隆太教授のコメント)
結果が出るまでは、長時間勉強している生徒は多少の差はあっても、成績上位層にいると予想していました。
長時間勉強している生徒のスマホの利用時間は少ないと考えていたからですが、中にはスマホを長時間使用する子もいました。
すると、いくら長く勉強してもスマホをやり過ぎると成績が落ちるという結果が出たのです。予想外の結果に私たちも目を疑いました。
勉強時間が長くてもスマホを長時間使うと成績が落ちるのはなぜなのか。
スマホを使っている時の脳の働きを調べたデータがないため、まだ仮説の段階ですが、私は次のように考えています。
テレビを見たりテレビゲームをしている時、脳の中の前頭前野という部分は安静時以上に血流が下がり、働きが低下することが分かっています。
また、ゲームで長時間遊んだ後の30分から1時間ほどは前頭前野が麻痺したような状態となり、機能がなかなか回復しません。この状態で本を読んでも理解力が低下するというデータもあります。
また、テレビの長時間視聴を3年続けた5~18歳の子の脳をMRIで解析すると、前頭前野の思考や言語を司る部分の発達が、長時間視聴していない子に比べて悪くなる傾向がこれまでの研究で確認できています。
つまり、スマホを長時間利用することは、ゲームで遊んだりテレビを長時間視聴した後の脳と同じような状態になって、学習の効果が失われるのではないかと考えられます。
前頭前野の具体的な働きは、記憶する、学習する、行動を抑制する、将来の予測をする、コミュニケーションを円滑にするなど、人間ならではの心の働きを司っています。
今回の調査では生徒がスマホをどのように使っているのかまでは調べていませんが、ゲームやLINE、YouTubeで動画を視るなどの使い方が多く、勉強の調べ物で使う機会はわずかでしょう。ですからスマホの長時間利用が脳に与える影響は、これまでの脳の研究データが示すストーリー上にあると考えても外れていないと思うのです。
また、一般的には睡眠不足が学習の妨げになると考えられます。しかし今回の調査では、睡眠時間に関係なく、寝ている子も寝ていない子も、スマホを長時間使っている子が点数を下げていました。現在、これらの分析を学術論文にまとめており、今後、もう少し詳細な情報を伝えることができると思います。
(参考:携帯・スマホ使用で成績が下がる (小中学生調査) | くらしのメモ帳くらしのメモ帳)
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